土砂降りボードビルレビュー
池上幸恵

『土砂降りボードビル』

 あー、楽しかった。と思えるいちにちがあったとして、具体的に何が楽しかったのって聞かれるといまいち思い出せないし、口に出したとたんあんまりおもしろくなかったことみたいにほどけて消えてなくなる。
 なんだかそんな楽しかった日の記憶みたいな演劇『土砂降りボードビル』。

 2017年に犀の角で行われたシアターキャンプでのディスカッションがもとになって生まれまたこの演劇。
 ボードビルというのは「軽喜劇」とか「軽演劇」という意味があって、歌や踊りやいろんなものを取り混ぜて演じることを指す。『土砂降りボードビル』は名前のとおり短い演劇が土砂降りみたいに切れ間なく続いて(設定も雨の日、というところが共通)なぜか合間には手品が披露されたりする。

 短編のエピソードはどれも夢物語のようでいて人ごとに思えない。 
 たとえば「もし」と考えることはきっとだれもがあって、それはいつかの食卓で、教室で、部室で、車内で、誰かと話したことがあるかもしれない「もし明日地球がなくなるとしたら?」とかそういうこと。でもそんなこと、おふざけみたいに思いついたこと言って、笑って、忘れてしまう。でも『土砂降りボードビル』ではそれが演劇として、でも教室で、部室で、車内で話してた時みたいに瞬発力のあるおもしろさで見ることができる。それはやっぱり、きちんとその根底に誰かのエピソードや本当に言ったことばがあって、ことばや演技が離陸したりせず絶妙なバランスでそこにあるからなんだろうなと思う。

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